015 さて再開
さて、営業を再開しました。初日、気持ちの良い青空に恵まれてよかった。早速オープンから来てくださった皆様どうもありがとうございます。無事に無破損で品物をお披露目できてホっとしています。 二週間足らずの渡仏でしたが、いつも帰国してから店を開けるまで、フランスの余韻と日本の速...
014 モディリアーニ、そして帰国
先日無事に帰国しました。結局帰国日もぎりぎりまで蚤の市で仕入れをしてしまった。 実は後半のパリ滞在は当初予定してなかった。仕入れのタイミングが重なり急遽南からパリに来たのだった。 前半のパリ滞在で常宿のスタッフ・クリステルにまた来年!とさよならを告げたばかりなのに、また舞い...
013 人生とショコラ・ショー
続き 明日の仕入れに備え、アペロと夕食を早めに切り上げ僕たちは店を出る。2人で凍えながらレピュブリック広場まで雪の降る道を歩く。オスマン建築のマンサード屋根が白く染まる。白い外壁が余計に白く見えた。 あまりの寒さに道ゆくパリ市民は皆笑っている。横殴りの降雪が寒すぎて笑えてく...
012 雪降るパリへ
パリ・リヨン駅に着く15分ほど前から車窓をパサパサと雪が叩き出した。それから5分もしないうちにあたり一面は吹雪に変わる。期待していた景色が目の当たりになり、僕たち南からの移動者は外の景色に釘付けになる。天気予報は的中。さっきまでマフラーを巻くのを躊躇していた僕は、改めてパリ...
011 やっと日記 TGV202座席より
さて、今南からパリに向かうTGVの車内でこの日記を書いている。今日パリは大雪予報だ。パリ・リヨン 駅に着く頃には雪が街を白く覆ってるかもしれない。 南ではずっと晴天だった。忙しなく仕入れに奔走していても晴れが続くだけで気分がいい。青空とキンとした空気。プラタナスの葉が石畳に...
10 Wasted Nights
街から街へ。いくつかの都市を移動しながら仕入れが続いている。早朝から仕入れが始まり重い戦利品を抱えながらの移動。途中に梱包と発送をこなす。この数日は昼食さえとれない程に忙しない日々だった。 たくさん歩き、頭も使う。疲労の質は深く、アドレナリンの分泌だけを頼りに乗り切る。覚醒...
09 Paris 再会 バスに飛び乗りまたね。
早朝、週末のメトロは空いていて快適だ。街はまだ完全に眠りから醒めていない。 13番線はクリシーあたりが数日工事らしい。ホームの次発時間が×マークに点灯している。初めて見た表示だ。だがポルト•ド•ヴァンヴに向かう僕には関係ない。逆方向なのだ。...
08 パリ着
高度3万フィート。どこまでも視界は青の世界。やがて機体はフランス上空のぶ厚い雲に突入する。シートベルトサインと共に最後まで見れない機内映画が惰性に変わる。イーストウッドの物語の結末は大体同じだ。放っておけばいい。気がつけばグレイッシュないつものフランスに包まれ,誘導灯のサイ...
07 確か2011年のブリュッセル行き
CDG (Aéroport de Paris-Charles-de-Gaulle) 何故かは思い出せないが、その時僕はエアチケットとタリスの乗車券がセットで発券されたブリュッセル行きのコピー用紙を握りしめていた。そんな種類のチケット後にも先にも手にしたことなんてない。...
06 Mémorial de la Shoah
イスラエルとパレスチナの紛争が続く現在,改めて以前渡仏で訪れたパリ・ショア記念館の文章を掲載してみます。歴史は繰り返すと言うけれど、どのような形であれ悲しみの遠くない彼岸に僕たちは立っているのだろう。岸に橋をかけられた時、僕たちは一体どうなるのだろう。...
05 パリタクシー チュニジアン
とある買付小話 帰国日、荷物が重いのでホテルでタクシーを呼んでもらい空港に向かった。 ロビーで待つこと2分、すっ飛ばして到着したタクシーのドライバーはよく喋る40代後半くらいのチュニジア人だった。 ドライバー 以下D 'ムッシューターミナルは? IIMURA 以下I...
04 ポール・ヴァーゼンへのラブレター
マドモワゼル。私はあなたの残した美しい手仕事を南フランスの蚤の市の片隅で 見つけました。古くて素っ気のない化粧箱が私を呼び止めたのです。箱を開けた時、私は瞬時に自分に与えられた仕事を確信しました。古物の孤独で果てのない潮流からあなたの作品を掬い上げるという仕事です。 ...
03 落書きのような文章
稚魚が海原に放たれていくように、私たちはこの世界に無防備に生き始めた。幾多の海流の行方を何も知らなかった。 閃空の景色が一瞬のように、光と闇が分け隔てるものほど不確かなものは無いはずなのに、私たちはその強い差異に答えがあると錯覚し過ちを繰り返し続けてきた。...
02 みかんと湯気と台所の音、革命。
幼少期の祖母との記憶で、ぼんやりとしたいくつかの幸福な時間がある。一つは生まれて最初の住まいだった東京の家。間取りは覚えていないが小さな和室でテレビがついていた。事実かどうかは曖昧だか僕はそう記憶している。小さな和室。 僕はみかんを頬張りながら大相撲の千秋楽を祖母とテレビで...
01 聖橋とエヴァンス
暦では秋だが、どこか夏の面影が東京の空を染めていた。グレナデンシロップが溶解していくような分水嶺も、やがて季節がすっかりと深い夜を運んでくるだろう。そんな刹那の色彩に見惚れた人々は、聖橋でふと足を留める。僕もまたその中の1人だ。...