さて、今南からパリに向かうTGVの車内でこの日記を書いている。今日パリは大雪予報だ。パリ・リヨン 駅に着く頃には雪が街を白く覆ってるかもしれない。
南ではずっと晴天だった。忙しなく仕入れに奔走していても晴れが続くだけで気分がいい。青空とキンとした空気。プラタナスの葉が石畳に舞い落ちる。マイルス・デイヴィスの枯葉が耳に心地よく響く。年末になると10代の頃からこの曲を聴きたくなるのは変わらない。何故だろう?
パリから始まりパリに終わる。今回も途中にたまたま少しだけ誰かと一緒に過ごす瞬間があった。パリでS子さんと再会したのは随分前な気がする。たったの2週間前だ。
買付に来ていたTさんと交わした会話も印象に残ってる。朝、始まりの遅い蚤の市で僕たちはディーラーの荷出しを待たなければならない。大体30分から1時間くらいだ。そんなとき無駄に歩いても疲れるから、木陰に腰掛けたりしながら待つことになる。この時間がなんだかいつももどかしい。
Tさんはいつもこの時間に木陰に座りながら'なんか、人生とか振り返ったりしてるんですよ'と冗談まじりに話してくれた。
僕は思わずハッとして、それすごくいいですね〜'と真剣に反応してしまった。
プラタナスに囲まれた田舎の蚤の市は確かにそんな気分にしてくれる。ゆっくりいこう。
ワインの生産者を巡っていたBさんとも偶然蚤の市で再会した。ストラスブールから南フランスまで車で来たんだよー、とひょうひょうと話す。どんだけ運転してんのよ。パリで会うならともかく、こんな片隅の蚤の市で会えるとは偶然って必然と思わざるを得ない。
おまけに、ちょうどその時,次の蚤の市への移動に頭を悩ませていた僕にとって'乗せてくよ'の言葉は救世主のようだった。(顔もちょっと聖人ぽい)Bさん運転ありがとう。
飲食店を経営するBさんは話す。やっぱり生産者に会いたいよね、まるで推し活だけどさ。どんな場所で作られたのかとか、顔とかさ。見たいじゃん?来なくてもいいかもしれないけど、やっぱり本人たちに会いたいよね。店で出してるワインの生産者、彼らに。
Bさんの話すことはよくわかる。僕もやっぱり現地に来ることでしか見えない,感じ取れない物事があるからこうして現地に来ている。それをしてやっと'知る'という事が骨身に染みる。
情報からこぼれ落ちた雫を手に感じたい。できるだけリアルに。
こんな風に旅で交わす瞬間が積み重なって僕のアトラス(地図)は広がっていく。
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