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更新日:2024年12月22日

パリ・リヨン駅に着く15分ほど前から車窓をパサパサと雪が叩き出した。それから5分もしないうちにあたり一面は吹雪に変わる。期待していた景色が目の当たりになり、僕たち南からの移動者は外の景色に釘付けになる。天気予報は的中。さっきまでマフラーを巻くのを躊躇していた僕は、改めてパリがフランス北部であることを実感する。


プラットフォームに降り立つ皆が駅舎に降り注ぐ雪景色にスマートフォンをかざす。降雪のパリの風景がSNSのハッシュタグを白く染めるのだろう。冬が本格的に到来を告げたのだ。


駅を出て宿までのタクシーを呼ぶが駅前でバスが立ち往生し、乗車ポイントにタクシーが進入ができない。僕が呼んだアフリカ系の気の強そうな女性ドライバーは乗客の僕を発見すると道のど真ん中で停車しハザードも無しで早く乗れ!と合図した。重い荷物を抱えた僕は吹雪の中バックトランクをこじ開ける。素早くキャリーを滑り込ませ、すかさず後部座席に乗り込む。クラクションの嵐を我関せずドライバーはにっこりする。パリへようこそ、だ。


タクシーはサンルーフの車体で、僕はシートにへたり込みながら空を見上げる。ひらりひらりと音もなく降り注ぐ雪は、周りの喧騒とは裏腹に不思議なくらい静かだった。ドライバーは特に雪の事は気にしていないようだった。時おり強引な車線変更を試みる車に躊躇なくクラクションを鳴らすだけだ。僕はその都度その様子を確認したが,結局彼女はホテルに着くまで一度も道を譲らなかった。気づけば僕は最短距離で宿のエントランスに降り立っていた。


部屋に入り一息,パリに先に戻っていたIくんに連絡。お昼食べよーと伝えるとすかさず気の利いたアドレスがいくつかセレクトされて届く。彼のGoogleマップはポイントピンで埋まっている。華麗なる速さはいつもの事だ。ありがとう。


ひとまず徒歩圏内で昼から美味しいワインが飲める場所で落ち合う。買い付けも終盤、ささやかな打ち上げだ。雪のパリを眺めながら疲れた体に気持ちよく美しい酵母が染み渡っていく。



続く


 
 
 

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