早朝、週末のメトロは空いていて快適だ。街はまだ完全に眠りから醒めていない。
13番線はクリシーあたりが数日工事らしい。ホームの次発時間が×マークに点灯している。初めて見た表示だ。だがポルト•ド•ヴァンヴに向かう僕には関係ない。逆方向なのだ。
時差ぼけの浮遊感を追い払うように、地下鉄に揺られながら今日一日の予定を頭の中で確認する。日本で運動をサボったツケを払うことになりそうだ。今日は幾つかの蚤の市をハシゴする。
この季節、スタートはまだ暗い。まばらなスタンドとエスプレッソや紙巻き煙草の香り。朝の蚤の市の匂いだ。ポケットに忍ばせてきた懐中電灯を点灯する。今年新調したライトはルーメンと照射範囲が理想的だ。ちまちま照らしていてはモノは見つからない。こうして僕の一日の仕事が始まる。
あらかたもの探しに目処がついた頃、S子さんと再会。今年は9月の買付をスキップしたから約半年ぶりだ。けれど特段久々という気がしない。お互いごく自然におはよう、だ。
けれどこの日は移動しなに近況報告をゆっくりできた気がする。仕事の話というより、もう少し個人的な事や、今の心境など。バスでゆっくり移動しながら、昼食をたべながら、忙しく仕入れをする最中にそんな時間が心地よかった。
こんな機会は久々な気がする。
最後、彼女はバスに飛び乗ってお互いさよならもろくに交わさなかったけれど、それも僕たちにとってごく自然な、'らしい'さよならなのだ。また年末に日本で忘年会でもできたら。
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