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満開のアーモンドの花が揺れる南仏の田舎道を駆け抜けている。ささやかに芽吹き始めたコートドゥローヌの葡萄の新芽が春を告げてくれている。ヴォクリューズの低山の稜線も緑に染まり、どこまでも長閑な世界だ。


行きの機内で60年代のボブ・ディランを描いた映画'名もなき者'を見たせいでずっとプレイリストはディランだ。あのシャラメをずっとみていたい、それほどに色っぽく魅力的だった。


劇中ディランはいつまでも'風に吹かれて'なんて歌ってられないと言ったけれど、数日前まで暴力的に猛威を振るったミストラルも曇り空を吹き飛ばしながら季節を更新してくれたらしい。僕の向かいに座る少年なんて短パン半袖じゃないか。


そういえばフランスはサマータイムに変更されたのだった。間も無く昼間からパナシェやスプリッツを楽しむ人々があっという間にテラスを埋めるだろう。


4月の南仏はいつも通りに美しい。そんな景色を眺めながら僕はいまだに風に吹かれてを聴きながら旅をしている。そして世界はまだ揺れている。60年前に歌ったディランの詩の答えはまだ出ていない。答えは風の中に吹いている。


旅を続けよう。それではまた。







 
 
 

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